Q1 矯正治療に年齢制限はあるの?
基本的にはありません。歯を支えている組織(歯周組織)が健康であれば何歳でも治療可能です。
しかし、成長期であればその成長を利用した治療ができますから、少しでも若い方が矯正治療には有利といえるかもしれません。
Q2 治療期間と治療費は?
矯正治療は第1段階の治療(まだ乳歯がある時期の治療)と第2段階の治療(すべて永久歯になってからの治療)にわけます。
第1段階の治療は12歳くらいまでの治療となり、通常1カ月~2カ月に1回の通院で数年かかります。
検査の上、第2段階の治療が必要となればさらに1カ月に1回くらいの通院で2年~2年半くらいかかります。
第1段階の治療はなるべく第2段階の治療に進まないように!
また第2段階の治療に進んでもなるべく永久歯を抜かないように!
というのが治療の目的になります。
矯正治療は一般的に健康保険が適用されません。
矯正料は第1段階の治療が40万円(税別)、第2段階の治療が必要になれば+45万円(税別)が必要です。
すべて永久歯になってから治療を開始される場合は40万円+45万円の85万円(税別)が矯正料になります。
処置料は処置内容によって異なり、1,000円~4,000円(税別)です。
お支払いただいた費用は医療費控除の対象になります。
一部の先天的な病気や、骨格性の受け口などの手術を必要とする顎変形症の矯正は健康保険の適用になります。
Q3 歯を抜くの?
必ず歯を抜くということはありません。検査によって顎の大きさや歯の大きさ、全ての歯を並べるためにどれくらいスペースが足りないかということを検討した上で、どうしても抜歯が必要と判断したときに歯を抜くことになります。
Q4 痛みはあるの?
痛みというより違和感の方が強いようです。お口の中は敏感です。例えばお口の中に髪の毛が1本入っただけでも変な感じがしますから矯正装置が入れば・・・。しかし、違和感も歯が動くときに起こる歯の浮いた感じも通常2~3日で慣れますので安心してください。
Q5 歯みがきはどうするの?
お口の中に装置が入るとどうしてもその周りは汚れやすくなります。むし歯の原因となりますからしっかり歯みがきをしなければなりません。歯みがきの方法は歯科衛生士が詳しく説明、指導してくれます。
Q6 矯正治療を受けようと思ったら?
「かかりつけ歯科医」の先生がいたらまず相談し、矯正歯科医院を紹介してもらいましょう!
矯正治療を専門に行っている先生は大学を卒業後、何年も大学や研修機関で勉強します。学会で症例報告を行ったり、論文を書いたり・・・
因みに私は顎関節を大学で勉強しましたので顎関節を理解した矯正歯科医と自負しています。
矯正歯科医はテクニックだけではなく理論に基づいた治療を行います。
相談する先生がいなければ当院のように「○○矯正歯科医院・クリニック」といった矯正治療を専門におこなっている先生を受診する事をおすすめします。
矯正治療に入る前に検査を行い、症状の説明、治療方針を説明(例えば、歯を抜かなければならないなら、なぜ抜かなければいけないかを具体的に説明)してくれる先生をおすすめします。
費用はかかってしまいますが、合う合わないもありますから検査を受ける前に数件の矯正治療専門の歯科医院を受診するもいいかも知れません。
中部矯正歯科クリニックのFacebook「えんど~先生教えて!」から抜粋しました。
これから矯正治療をはじめようとお考えの方には参考になると思います。
- なぜ矯正治療しないといけないの?
えんど〜先生が大学で行った調査では、中高生の咬合面積(咬んだ時の上下の歯のあたる面積)、咬合力(咬む力)を計測したところ歯並びの悪い人は咬合面積が少なく、咬合力が小さいことがわかりました。
物を咬むということにはいろいろな要素が絡んできますが、上下の歯の咬合面積を1つの指標とするならば、当然面積の大きい人の方がしっかり咬めることになります。
しっかり咬むことによって食物は消化吸収されやすくなることは説明するまでもありません。
しっかり咬める環境を作ることが大切だと考えています。
また、えんど〜先生が大学で行ったラットを使った動物実験では、柔らかいものばかり食べて(あまり咬まずに)成長した顎の関節は硬いものを食べて成長した関節より小さいことがわかり、その後の口の中の変化(実験では抜歯)に対して下顎頭軟骨(下の顎の関節の表面を覆っている組織)の反応に違いがみられました。
“ 咬む ”環境を整える矯正治療は決して見た目だけの治療ではない!
ということです。
- 矯正を始める時期はいつがいいの?
上の顎の成長する時期と下の顎の成長する時期は違います。
成長期の患者さんには、上の顎、下の顎の成長に合わせた治療を行います。顎の骨の成長を考えると小学校に上がるくらいに一度みせていただくのが理想です。不良習癖(顎の成長に悪い影響を及ぼす癖)があれば取り除くトレーニングも合わせて行い、正しい顎の発育(顎育)に努めます。
永久歯が全て生えそろい、骨の成長が終わった患者さんの場合は今の顎の中で歯を動かし歯列矯正をすることになります。気になった時が治療を始める時期ということになるでしょう!
中部矯正歯科クリニックには5歳以下のお子さんから60歳以上の方まで来院頂いております。小さなお子さんは受け口や出っ歯を主訴に来院される方が多いように思います。中高生以上になると出っ歯や叢生(ガタガタ)が多くなり、年齢が高くなると歯周病やインプラントの前処置としての矯正治療を希望される方が多いようです。
- なんで歯がガタガタになるの?
歯のガタガタ?デコボコ?は歯の大きさと顎の大きさのバランスが取れていない時に起こる状態です。例えば歯の大きさはいいけど顎が小さい場合、また顎の大きさはいいけど歯が大きい場合などは顎の中で歯が収まり切らずガタガタになります。
上の歯は1番目の歯(中切歯)と6番目の歯(第1大臼歯)が6歳ごろ生えてきます。その後は2番目4番目5番目最後に3番目の歯(犬歯)が生えるのでスペースが足りないと犬歯が影響を受けて歯列の外側から生えてきます。いわゆる八重歯です。
下の歯は1番目6番目の歯が生えた後は2番目3番目4番目最後に5番目(第2小臼歯)が生えるので第2小臼歯が影響を受けることが多いです。生えるスペースがなければべろ(舌)側に倒れて生えたり、埋まったままということもあります。
歯の生える順番の違いが下の歯で八重歯を見ない理由です。
「子供の歯の時は隙間なく綺麗に歯がそろっていたのですが・・・」と言われる方がいらっしゃいます。大人の歯(永久歯)が生える頃(6歳頃)には隙間だらけにならないと乳歯より大きい永久はきちんと生えてきません。「子供の歯の時は・・・」とおっしゃる方の場合は顎が小さい可能性があることになります。
- なんで”出っ歯”になるの?
・上の歯がくちびる(唇)側に傾いている場合
・下の歯がべろ(舌)側にたおれこんでいる場合
・上の顎全体が前の方にある場合
・下の顎全体が後ろの方にある場合
出っ歯(上顎前突)になります。
原因としては咬下唇癖、指しゃぶり、口呼吸などの不良習癖や遺伝によるものがあります。
- なんで”受け口”になるの?
・下の歯がくちびる(唇)側に傾いている場合
・上の歯がべろ(舌)側にたおれこんでいる場合
・下の顎全体が前の方にある場合
・上の顎全体が後ろの方にある場合
受け口(反対咬合)になります。
原因としては咬上唇癖、爪咬みなどの不良習癖や、上下前歯の萌出時期にズレがある場合や遺伝によるものがあります。
- なんで”開咬”になるの?
・上下の前歯が低位(生え切っていない)の場合
・上下の臼歯が高位(出過ぎている)の場合
・顎の形に問題がある場合
開咬(咬んだ時に上下の前歯に隙間がある状態)になります。
原因としては舌突出癖、指しゃぶり、口呼吸などの不良習癖や遺伝によるものがあります。
- 上の前歯が”ハの字”に生えてきた!
「なんで歯がガタガタになるの?」でも書きましたが、上の歯は1番目の歯(中切歯)と6番目の歯(第1大臼歯)が6歳ごろ生えてきます。その後は2番目4番目5番目最後に3番目の歯(犬歯)が生えます。
1番目2番目の歯はハの字に生えてきて3番目の頭が1番目2番目の歯の根っこに当たらないようにしているのです。3番の頭の隙間を確保しているのです。3番目の歯が生える際に押されて1番目と2番目の歯はまっすぐになり真ん中の隙間もなくなるものです。
最近、一般歯科で“ハ”の字を主訴に来院された子供さん(小学校の低学年)にブラケットをつけて矯正される先生を多く見かけます。3番目の犬歯のスペースが確保されないこと、2番目の根っこが犬歯に当たり成長障害を起こす可能性があることからおすすめできる処置ではありません。矯正医は基本的に全ての歯が永久歯にならないとブラケットはつけません。
真ん中に隙間の原因は上記だけではありません。唇から伸びている帯(上唇小帯)があります。年齢とともに付着部位は低くなるのですが、稀に高いところに着いたまま(高位付着)で、その繊維が歯と歯の間に残っている場合は正中の隙間は閉じてきません。この場合は上唇小帯を切って短くする必要があります。
もう一つ、正中に余分な歯(過剰歯)が埋まっている場合があります。この場合も隙間は自然には閉じませんから1番目の歯の根の成長状態を見ながら適切な時期に過剰歯を抜歯する必要があります。
- 顎関節症って?
顎関節症とは顎関節部や咀嚼筋などの疼痛、関節音、開咬障害ないし顎運動異常を主要症候とする疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包・靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれるとされています。顎関節症の代表的な症状は、あごが痛む(顎関節痛)、口が開かない(開口障害)、あごを動かすと音がする(顎関節雑音)の3つで、このうち一つ以上の症状があり、鑑別診断で他の疾患がない病態を「顎関節症」といいます。
日本顎関節学会のHP (http://kokuhoken.net/jstmj/general/)を参照してください。
- 不正咬合と顎関節症の関係は?
咬み合わせの悪い人が全員顎関節症かというとそうではありません。しかし、不正咬合は顎関節症状を悪くする増悪因子として働くことは報告されていますから、健全な顎関節機能を営むためにも悪い咬み合わせは治す必要があります。
- 不良習癖って?
不良習癖には指しゃぶり、口呼吸、頰杖、舌突出癖、咬唇癖、爪咬み、Teeth Contacting Habit (TCH) 、歯ぎしり等があります。
不良習癖は不正咬合の原因になります。例えば上の顎の成長期に指しゃぶりがあると上顎骨自体や上の前歯を引っ張り出そうとする力が加わることで出っ歯(上顎前突)になります。
下唇を咬む癖があれば出っ歯(上顎前突)に、上唇を咬む癖があれば受け口(反対咬合)になります。
顎の成長期に頬杖かあると押された方に顎が歪んで成長し、顎変形症になる可能性があります。
つまり、不良習癖とは顎口腔系の成長発育に悪い影響を及ぼすよくない癖ということです。
顎の成長期に不良習癖が残っていると問題ですが、3歳ごろまでの指しゃぶり等はその後の顎の成長には影響しませんので心配には至りません。
- なぜ親知らずを抜かないといけないの?
親知らずとは第3大臼歯のことです。必ず抜かなければならないということではありません。まっすぐ生えていれば抜く必要はありませんが、短頭系(頭の横幅に比べて前後径が短い)のアジア人(含日本人)は第3大臼歯まで生えるスペースが無いのです。その結果、特に下の親知らずは生える方向を斜めや真横に向きをかえ、前の歯(第2大臼歯)を後ろから前へ押す事になります。
(余談ですが・・・。歯の生えるスペースの十分あるアフリカの人は第4大臼歯まで、しかもきれいに生えています。)
レンガブロックでできたアーチを想像してみてください。きれいに並んだレンガブロックのアーチは外からの力にも耐えるだけの力を発揮しますが、一個ブロックを取り除いただけでゴロゴロと壊れてしまいます。歯並びも同じで、せっかく歯列矯正を行なっても後からの力を受けて何かの拍子に前歯がズレるとデコボコになります。
上の親知らずは奥のほうを向いて生えてきますから、下の親知らずほど歯列への影響はありません。
また第2大臼歯と横または斜めになった第3大臼歯との間に物がたまるとむし歯の原因になります。奥のむし歯にはなかなか気づかないもので、症状が出た時には第2大臼歯と第3大臼歯の2本とも抜歯しなくてはならないというケースもあります。
女性は妊娠し、つわりなどでお口の清掃状態が悪くなった頃になぜか奥歯が痛くなったりします。妊娠しているのでレントゲン撮影も控えたい。お薬も控えたい。歯も抜けないととんでもないことになりますので早めの抜歯をお勧めしています。